石原友明『SCOTOMA』

press release

80年代に登場し、点字を用いたタブローや、革を縫った彫刻、買い手が制作するオブジェのキット等、美術の枠や制度に挑戦するようなシリーズを展開してきた石原友明の新作展を開催いたします。
今回のタイトル「SCOTOMA」は、医学用語で盲点という意味で、視野のなかにありながら、なお視覚では認識できない事象や人間の思考、意味の空白など、様々な角度から盲点的なものを提示していくことが本展のテーマになっています。
出品作品のひとつは、会場中央にワイアーで吊られた、空気を抜きとり、真空状態になった球体のガラスのオブジェです。
他には、セルフポートレイトとして、走査電子顕微鏡で撮影した作家自身のある部分を拡大した写真を展示いたします。光を使わないエックス線写真は「スコトグラフィー」と呼ばれますが、そこには、すべてを克明に見たいという人間の欲望と、肉眼で見えない部分を「見る」ときに可視光線だけでは不可能だという事実があります。
石原は、従来の光を使用する「フォトグラフィー=光画」との対比として「スコトグラフィー=盲画」という概念を提示し、あらたな角度から「見る」という行為を考証いたします。また、以前から取り組んでいる点字のタブローの新作も紹介致します。
これは点字をつかって美術の制度に対する盲点を浮き彫りにしたシリーズです。
これらの多様な作品群から、「SCOTOMA」的なるものが浮かび上がってくることになるでしょう。