この作品は乳児のフォトグラムである。フォトグラムはカメラやレンズを使わないで撮影する。カラー印画紙の取り扱いは完全な暗室で行う。だから赤ちゃんがどの位置で、どんなポーズをしているのか、現像して、像が現れるまでわからない。モデルになってくれたのは、生後2ヶ月から6ヶ月くらいまでの赤ちゃんたちである。
きっかけは、美術館で私の以前の作品を見た産婦人科の医師との出会いだった。ドクターから「赤ちゃんをテーマに作品を作ることに興味はありますか?協力しますよ」と提案を頂いた。それから時々クリニックに通って、生まれたばかりの赤ちゃんを撮影させてもらうことにした。
つい数時間前まで「この世界」にいなかった命と対面するのは不思議な体験だった。続けているうちに、こんなことを考えるようになった。赤ちゃんたちはどこから来たのだろう?赤ちゃんたちが「この世界」に来る前にいた世界はどんな世界なのか? 自分もいつかそこに戻っていくのか。(その時クリニックで撮影した赤ちゃんたちと、本作品のモデルは異なることを記しておく。)
(写真集『未来の他者』より抜粋)
【写真集】
北野謙『未来の他者』
判型|290×200mm
頁数|68頁、図版18点
テキスト|北野謙
言語|日本語、英語
編集・造本設計|町口覚
デザイン|浅田農 (マッチアンドカンパニー)
価格|¥1,980 (税込)
発売元|bookshop M
出版年|2021年8月
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