星男(1990)
『星男』は、1990年に制作されたビデオ作品と、関連の写真作品からなるシリーズである。森村にとってはこれが最初のビデオ作品になる。
マン・レイが1921年に撮影した、後頭部を星形に刈ったマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)のポートレイトがモチーフになっている。(“Tonsure” by Man Ray)
ビデオは三章からなる。第一章で、森村は鶴橋のアトリエで、後頭部を星形に刈り取られる様子を見せる。第二章では、星形に刈られた後頭部を見せた森村が、平安神宮や金閣寺など京都市内を観光する様子が映し出される。最後に、新京極の路に星形に倒れる森村を遠巻きにする人々。最後の章では、森村はある美術館の収蔵庫を訪れ、そこに展示してあるデュシャンの作品のグループに遭遇する。作品を一通り見た後で、デュシャンの『なりたての未亡人』(Fresh Widow)というフランス窓のミニチュアの作品の前に立ち、着ているものを脱ぎ捨てると、。最後に鴨川の向こうに見える山々から真っ赤な唇が空へ登っていくシーンで終わる。最後まで森村は振り返らず、ただひたすらに星形に刈られた後頭部が映し出される。第一章と三章はカラーであるが、第二章は白黒である。