Installation

インスタレーションを構成する要素はときに饒舌で物語性を感じさせるものであったが、80年代末より、ガラス、鉛、石膏、青く染めた糸などを用いた抽象的な空間構造に変化していく。この時期、ヴェネツィア・ビエンナーレ(第44回、1990年)のアペルト部門に招待され、「その水は元の位置に戻る」と題されたインスタレーションを発表した。これは、1988年に信濃橋画廊(大阪)で発表された同名の作品のバリエーションである。床と壁に鉛が敷き詰められた空間の真ん中に、六角形の万華鏡風の覗き窓がある白い立方体が立てられている。床には壁に沿ってガラスの破片がはいっている石膏の細長い側溝のような容れ物が置かれて、白い立方体の前には、六角形に切ったガラス板がきっちりと積み重ねられている。天井の装置からは、青い糸が落とされ床に溜まっている。

インスタレーションのミニマル化はさらに進む。1993年、バンクーバーアートギャラリーの「Out of Place」展では、白い壁に囲まれた十字に交わる通路だけのインスタレーションが展示された。足下には白い煉瓦が敷かれ、奥は階段になっている。奥に行くにつれ天井高も低くなり、突き当たりの小さい丸い鏡がたくさん貼られた壁の奥からは強い光が放たれている。

作品を見ることよりも、白と鉛色を中心に極めて純化された空間内で移動することが展覧会の体験である。そのとき、観覧者の身体がその作品を完成させる最後のパーツになる。我々は、動く身体と壁や床、階段など空間の構造との関係を意識させられる。

作品がミニマルな白い通路に限りなく近づいた後、一転して、有名な寓話を引用する強い配色とオブジェを伴ったインスタレーションに移行する。1993年Gallery KURANUKIでの個展「Labour」以降、赤や緑の壁に囲まれた空間に、「三匹の子豚」「赤ずきんちゃん」「雪の女王」などの童話のモチーフが、オブジェやドローイング等のかたちで引用される物語性に富んだインスタレーションが展開された。使われる素材も、引用される寓話に呼応して、煉瓦、丸鋸、フェイクファー、三面鏡などが用いられ、それらは、寓話の世界が持つ残酷性や、子供の潜在意識に働きかける道徳性に関連している。このシリーズは、東京都現代美術館開館展「日本の現代美術 1985-1995」(1995)、同年のサイト・サンタフェ、ニューヨーク近代美術館のProject 57等の会場で次々と発表され変奏を重ねていく。


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