存在と不在の間に-児玉靖枝初期絵画展

会期|〈PART 1〉2023年6月29日(木) – 7月23日(日)

会期|〈PART 2〉2023年8月5日(土) – 9月3日(日)

会場|MEM  map
時間|13:00 – 19:00
定休|月曜日 (月曜日が祝休日の場合は開廊し、翌平日休廊)、
定休|8月13日-21日は夏季休廊
電話|03-6459-3205

 

児玉靖枝は1961年神戸生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。1980年代初頭から《natura morta》(イタリア語で静物の意)という題名で一連の静物画を描き始める。絵画制作について思考を深めるにつれて、作品は抽象化していった。机にしっかり置かれていた物体が、徐々にその実体を失い、浮かび上がり、染みや影のようなものとして画面を漂い始める。それが90年代にはいると観覧者を包み込むような大画面に、青、黄、赤などの鮮やかな色の筆線が自由自在に画面上を駆け巡るようになった。現実にある物体を写実的に再現する画風から大きく変化し、絵画空間に見え隠れする実体を追求する完全に抽象的な、書道にも近い絵になっていく。激しい筆跡の間の空(くう)に不意に現れるもの。物体を消すことによって、強調される絵画的存在。児玉は存在と不在の間を繰り返し描く。

作品は、それからの十年の間、抽象的な絵画言語をさらに推し進め、ある地点まで到達したとき、突然、自然の中や身の回りで見られる形象—花、樹木や金魚など—を画面に取り入れる具象的作風に反転する。そして、絵画的思索はさらに進む。2009年より、絵具の層を幾重にも画布に乗せていく独自の手法で、「不可知な存在が開示する陰翳や奥行きを絵画として抽象する」《深韻》という題名の一連の作品に取り組むようになる。

このように見ると、児玉の絵は具象と抽象の間を定期的に行き来しているようだ。しかし、その考察と実践は、はるかに複雑である。ものを精細に捉え絵に再現することから始まり、ものが絵のなかに現れることの意味、そのときの自分と対象との関係、その間の空間の奥行き、そして、時間のなかで偶然を取り込むこと等。それらの考察を深める絵画技法を磨きながら、既存のモダニズムの絵画言語を批判的に乗り越える試みを続けてきた。自身の絵画でしか表現し得ない世界を探求してきたのである。児玉の1980年代から1990年代にかけての初期の作品群はその最初の飛躍を示すものである。本展「存在と不在の間に」は、その足取りを、二期にわけて展示する。


Further readings

 

松浦寿夫「外在性の絵画」2023年

 

 


Publications

児玉靖枝 - 深韻
2009年より手がけている「深韻」をテーマとした作品群を、作品図版と展示風景と合わせて収録。雪をモチーフにした《深韻-白》が表紙となり、雪の中を分け入るように左右にめくるデザイン。
サイズ:B5変形 185×200mm
頁数:80頁 図版35点
製本:ソフトカバー
テキスト:峯村敏明、児玉靖枝
デザイン:芝野健太
言語:日本語、英語
出版 : MEM
出版年:2018
定価 2,300円(税抜)

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