大森克己展|山の音 - sounds and things vol.3

会期|2022年10月20日(木)-30日(日)
会場|MEM  map
時間|12:00 – 19:00
定休|月曜日 (月曜日が祝休日の場合は開廊し、翌平日休廊)
電話|03-6459-3205
作家在廊日:10月20日(木)、他在廊日が決まり次第、大森克己さんのinstagramで告知します。

スライドショー「山の音」
開催日|10月28日(金)、10月29日(土)
時間|19:15開始(19:00受付) 上映40分間
会場|MEM
定員|先着20名(予約優先)
会場にてご予約、もしくはMEMへお電話にてご予約ください。 Tel. 03-6459-3205

 

今年刊行された大森克己の初のエッセイ集『山の音』(プレジデント社)と同名の写真展を開催いたします。

本展は、日々の生活で出会う人、モノ、こと、さまざまなモチーフを撮影した写真に言葉を添えて、「目に見えるものと目にみえないものの境界」と「時間の意味」について問いかけるプロジェクト《sounds and things》の第三弾でもあります。2014年、2015年と続けて発表した同シリーズは、その後にスマートフォンで撮影された写真も加わり展開を広げています。

今回は展示空間を二部屋に区切り、対極的な手法による写真で構成されます。一部屋には暮らしのなかで自然光で撮影された写真群、もう一方の部屋では強いストロボ光による写真を大きく引き伸ばして展示いたします。

 

「そもそも写真を撮るということは、何かのついでにすることで、まず人生が先にあって、天気がいい日にピクニックに行って、友人や家族の写真を撮るとか、山に登ったら可憐な花が咲いていてそれを誰かに伝えずにはいられないとかそういうことだよね。かけがえのない時間の断片がキラキラと光り輝いて、この世界は素晴らしい! 僕はいま、生きている。

 でも写真という道具というか、メディアはなかなか恐ろしいもので、写真があろうがなかろうが自分にとってかけがえのない瞬間なんてそんなに無闇矢鱈とあるはずもなく、自分が撮ったイメージであれ、他人がつくったイメージであれ、世の中に写真の数が増えるにつれて、どんどんかけがえのなさが大安売りみたいになってきてちっとも嬉しくない。自分がいま、ここで「見ている」ことも誰かに操作されているような気がしてくる。まったくセクシーじゃないね、この有様。

 脱出するためには歩くこと。イメージに言葉が追いつかないとき、幸せだなと思えれば僕は写真家だし、孤独だなと思えれば詩人になる。そして歩き続けていると、イメージと言葉の背後から音楽が立ち上がって僕を通り越していく。2時間、3時間、まだもう少し。

 東京散歩の途中で、僕が立ち寄りたいのは原宿駅からほど近い明治神宮の御苑。武蔵野の面影を残す大きな雑木林のある公園。池のほとりに佇んで風や鳥や虫の声に耳を澄ましていると自分の中のいろんな感度が上がってくる。野生の直感と率直に向き合いながらも街の息づかいが感じられ、自然の織り成す音の間からときどき山手線のチャイムや人のざわめきが聴こえてきて、自分がまるで都会に初めてやってきた木こりや猟師みたいになっていく。

 地下鉄の駅でもコインランドリーの前でも突然動物と遭遇するように世界を見る。夕立ちの後の道路の匂いとかロゼワインの入ったグラスに映る逆さまの世界とか、キラキラ光る川面とか、結局のところ、それは繰り返しだし、また初めてのことでもある。死んでみたり、生き返ったり。止まったり、また歩いたり。」

­––––­­–––大森克己『山の音』(プレジデント社)より

 

大森克己
1963年神戸生まれ。1994年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。国内外での写真展や写真集を通じて作品を発表。2013年グループ展「日本の新進作家vol.12 路上から世界を変えていく」(東京都写真美術館)に参加。2014年に個展「sounds and things」、2015年に個展「 “when the memory leaves you” – sounds and things vol.2」をMEMにて開催する。近年のグループ展に「Gardens of the World」(Rietberg Museum、スイス、2016)、「語りの複数性」(東京都公園通りギャラリー、2021年)など。代表的な写真集に「サルサ・ガムテープ」(1998 リトルモア)、「encounter」(2005 マッチアンドカンパニー)、「サナヨラ」(2006 愛育社)、「Cherryblossoms」(2007 リトルモア)、 「STARS AND STRIPES」(2009 マッチアンドカンパニー)、「incarnation」(2009 マッチアンドカンパニー)、「すべては初めて起こる」(2011 マッチアンドカンパニー)など。2022年7月に初の文章のみの単著となるエッセイ集『山の音』をプレジデント社から刊行。


【新刊】

写真家の大森克己さんが紡いだ言葉、記録と記憶。1997年から2022年まで様々なメディアで発表してきたエッセイ、ノンフィクション、書評、映画評、詩、対談などにコロナ禍の日々を綴った日記を加えた一冊。マドンナ、東日本大震災、アヒルストア、ECD、家族のかたち、バラク・オバマ、ライカ、浅草、iPhone……時代の空気を言葉で写す圧巻の全464p。

大森克己『山の音』

サイズ:四六 判
頁数: 464 頁
ブックデザイン:佐藤亜沙美
出版社:プレジデント社
発売日:2022年7月28日
ISBN: 9784833452069
価格:2,970円(税込)

【関連展覧会】

「写真新世紀」は、1991年より始まった公募形式によるキヤノンの文化支援プロジェクトです。2021年度をもって公募は終了しましたが、30年間の歩みを振り返る展覧会が東京都写真美術館で開催されます。一般投票から選ばれた歴代授賞10作品の中に大森克己の作品が含まれ、デビュー作となる《GOOD TRIPS, BAD TRIPS》が展示されます。

「写真新世紀30年の軌跡展-写真ができること、写真でできたこと」

会場:10月16日(日)-11月13日(日)
会場:東京都写真美術館 地下1階 展示室
入場料:無料
主催:キヤノン株式会社
https://global.canon/ja/newcosmos/news/topics/30exhibition/