北野謙展『光を集めるプロジェクト』

会期|2017年11月25日(土) – 12月24日(日)
会場|MEM map
open hours|12:00-20:00 月曜休廊 [月曜祝日の場合は営業し、翌日休廊]
tel. 03-6459-3205


[作家対談企画]
日時|11月25日(土) 19:00〜
会場|MEM
ゲスト|梅津元 (埼玉県立近代美術館主任学芸員 / 芸術学)
参加無料
*対談終了後、オープニングレセプションを開催

写真は“光が像を結ぶ”一事にかかっている。
写真家は行為者として明確な主語で、コンセプトを立て作品を制作する。ところがそれを追求していくと、自分のやったことなのに像が“立ち現れた”としか言いようのない、得体の知れない“淵”に立っている時がある。( 僕はこれを“ゆらぎの淵”とよんでいる。)
例えば、屋根の上に半年間取り付けたカメラを丁寧に取り出し、汚れを落としてフィルムを回収する。現像すると何本かに1本、ネガにうっすらと太陽の光跡が写っているものがある。それを丁寧にスキャンしてPhotoshopで調整する。すると見たことのない光跡がぐわっと浮かび上がる。無数の線は、46億年変わらない地球の公転と自転が刻む〈冬至—夏至〉の宇宙的リズムである。
「撮る(能動態)」とも「撮られた(受動態)」とも違う 「現れた」としか言いようのないこの“淵”は、行為なのか状態なのか。「する/される」の関係に集約されない主体と主語。(國分功一郎著『中動態の世界』には言葉の歴史の中で、動詞が〈能動態/受動態〉の対立構造になる前の世界について書かれている。)
“淵”への切符(方法)が見つかった時は(少し怖いのだけど)至福である。
そしてそこから見える世界を、写真というメディウムに入れて少しでも持ち帰りたいと思う。

2017年9月 北野 謙