金川晋吾 展|祈り/長崎

会期|2024年5月11日(土)-6月2日(日)
会場|MEM  map
時間|13:00 – 19:00
   [5月11日(土)はトークイベント開催のため、観覧は16:00まで]
定休|月曜日 (月曜日が祝休日の場合は開廊し、翌平日休廊)
電話|03-6459-3205

トークイベント
日 時|5月11日(土) 17:00-19:00
登壇者|小田原のどか(彫刻家・評論家・版元主宰)、金川晋吾
会 場|MEM
参加費|1200円
定員20名・要予約
トーク終了後にオープニングレセプションも開催いたします。オープニングレセプションは参加無料です。

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本展で展示される長崎の写真は、平和祈念像を中心とした平和公園に関連するもの、現地を歩いていると頻繁に目にすることになるマリア像やキリスト像、自宅にある祭壇を前にしたカトリック信徒等、なんらかの形でキリスト教信仰に関わっている人たちや、関連の建物、場所を撮影したものである。その合間に金川自身のポートレイトも挟み込まれている。
金川は2014年に東京の新大久保にあるルーテル教会で洗礼を受けている。金川は次のように語る。「神を信じるということは、信じるか信じないかのどちらかにはっきりと切り分けられるようなことではない。信じるということは、信じようとすることや信じたいと思うことであって、それはつまり信じるということのなかには、信じられないということも含まれている」
金川は信じられなさを抱えたままに洗礼を受けようと思ったのだが、それは「祈りというのは自分にとっていいものだと思ったから」だった。「祈ることは、語りかける相手である神の存在がまずありきなのではなくて、語りかけるという行為がまずありきなのだと思った。語りかけるという行為によって、その行為の対象が存在するようになるというと言い過ぎだが、その存在のリアリティが増していくのである」
金川は、2015年に彫刻家で評論家の小田原のどかの依頼をきっかけに長崎を訪れ撮影するようになった。小田原は東京藝術大学の大学院で、金川と同級生であり、長崎の原爆関連の彫刻の歴史的経緯について調査し論考を発表している。金川は撮影を開始した当初は自身の信仰の問題から、長崎のキリスト教文化の表象に主にレンズを向けていたが、やがて祈りの像としての平和祈念像にも関心を向けるようになる。その成立の歴史的経緯に批判的な目を向けながらも、巨大で過剰な肉体がもつ空虚さや、特定の宗教に依拠することを回避しようとしたが故の異種混交性などに惹かれる金川は「個人的には平和祈念像のことが好きだ」と語る。そして、そこに自身も含んだ男性性の問題を見る。
本展覧会「祈り/長崎」は、「祈りの長崎」として語られることの多い長崎を、金川自身の身体と信仰を媒介にすることによって写真で新たに表象しようとする試みだと言えるだろう。

 

作家略歴
1981年京都府生まれ。2006年神戸大学発達科学部人間発達科学科卒業。2015年東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。2008年に父が数年ぶりに行方をくらませたことを機に撮影をはじめた《father》や、2010年より10年間病院で暮らしていた伯母を撮影した《長い間》は、写真に加えて被写体と関わった日のことを綴った日記とをあわせた写真集にまとめられた。親子や血縁という「私的」とされるような関係を、淡々と、時に滲み出るユーモアを含んだ写真と言葉を並置させるアプローチが話題となった。その後、複数人で暮らす自身の生活を撮影した《ハイムシナジー》(2019-23年)や、父親とのことをあらためて言葉に綴ったドキュメンタリーノベル『いなくなっていない父』の刊行など、自己と他者の関係性をめぐって写真と言葉で発表し続けている。主な著作に2016年『father』(青幻舎)、2023年『長い間』(ナナルイ)、『いなくなっていない父』(晶文社)など。近年の主な展覧会、2018年「長い間」横浜市民ギャラリーあざみ野、2022年「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」森美術館など。三木淳賞、さがみはら写真新人奨励賞を受賞。小田原のどかが代表を務める出版社「書肆九十九」から、長崎のキリスト教文化や平和祈念像、そして金川自身の信仰などをテーマにした、本展と同名の書籍が2024年刊行予定。