深韻-水の系譜 白

児玉靖枝は80年代静物画の一連の作品から始まり、90年代の簡素で力強い抽象画の時代を経て、近年「深韻」と名付けられたシリーズに継続的に取り組んできました。
「深韻」では、ものや自然の中にふと立ち現れる陰影や奥行きをともなった存在の気配、その認識以前の感覚を扱っています。副題の「白(びゃく)」は直接には雪が主題になっていることを示しますが、作品内容は吹雪などで視界が白一色となり、方向感覚がなくなる体験(Whiteout)が元になっています。直接描かれているものは児玉がよく散策をするという雑木林ですが、そのなかで目にする光景は、自分自身の魂の反映でもあると言います。雑木林が白一色に覆われてしまったときの身体感覚や自然の中にある気配 - 児玉はそれらを幾重かの層を重ねる独自の手法で絵画的体験として表現します。


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