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児玉靖枝展 「深韻 2011 -わたつみ-」


会期 :2011年6月11日(土)〜7月17日(日)
MEM   東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 2F
tel. 03-6459-3205

open hours:12:00-20:00 月曜休廊

オープニング対談企画 6月11日(土)18:00- 松浦寿夫 X 児玉靖枝 展覧会会場(MEM)にて

児玉靖枝の新作絵画の展覧会を開催致します。
児玉は「日常の何気ない情景の中に感受される非日常的存在の気配を、その出会いの新鮮さやダイナミズムと、描く行為と形式とを重ねることで絵画として成立させようと」試みているといいます。金魚が動き回る水面の不思議さ、身近に或る雑木林のなかにある光と影の妙など、私たちの周りにある日常を主題にしながらも、その間には描かれていない、見えないはずの水や空気の広がりを感じることが出来ます。
すっきりとした涼しげな色彩の奥には、何層にも塗り重ねられたピンクやオレンジといった鮮やかな色彩が潜んでいます。完成された画面の奥からは光が届くように、ふとした瞬間私たちが目にする景色の空気そのものが表現されています。今回は近年テーマにしてきた<深韻>から、海を描いた新作を展示致します。
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2010年冬、展覧会の打ち合わせのために神奈川県の葉山を訪ねた時でした。
美術館の前に広がる海岸に出て、日が沈むまで打ち寄せる波に見入っていました。
近年、<深韻ー存在が開示する不可知な陰影や奥行き>をテーマに制作を進めてき た私にとって、生命と虚無、創造と解体、すべての源である海は、まさに<深韻>そのものでした。
描き切れない無力感に苛まれるのだろうと思いながら、この時の海をモチーフに試錯誤を重ねていた最中の3月11日、大津波が東北地方を襲いました。
未曾有の大災害に、実際に被害にあわれた方々のことを思うと心が痛み、海を描いた作品など、人々に恐怖をよみがえらせるだけかもしれないとも思いました。しかしながら、存在の圧倒的な不条理性を突き付けられた私たちは今、この不条理を超えるために、存在に対する畏怖の念を、そして<まなざし>の根源的な転換をこそ、求められているのではないかと思います。
全ての形態と色彩を内包する海の、そのすべてを描きだすことは到底不可能だけれども、御そうとする意識と現象(自然)に委ねる感覚のせめぎあいの中から絵画として紡ぎだせるものがあれば、キャンバスの上の油絵具は単なる物質を超えて、見る人の意識が存在の奥行きへと向かう契機ともなるのではと思いながら描いています。
震災で亡くなられた方々のご冥福と、被害にあわれた方々が一日も早く平穏を取り戻されることを、心からお祈りいたします。

児玉靖枝